学校長挨拶Greeting

退職に寄せて師と仰ぐ方との出会い

 私には師と仰ぐ方がお二人いらっしゃいます。お一人は、今日まで導き育んでいただき言葉に尽くせない感謝と思慕の念がつのる、先年ご逝去された佐々木周二先生です。先生との出会いは、昭和42年2月の面接の日。「頼みます」の一言で奉職が決まり、この一言は絶対に裏切らないと心に誓った日でもありました。短気で無鉄砲な私。ことある毎に始末書を書き「一晩『間』をおけ」と叱られ、そして「元気か」と言われたくて我武者羅に日々を送ってきたようです。(始末書は、今も校長室にあります。校長になって処分と思いましたが残して退職します。)
 もう一人は、大徳寺大仙院の尾関宗園先生。昭和46年春、旧定時制女子部修学旅行の担任引率として国宝大仙院に参拝した時のこと。「先生の座っているそこが秀吉の席です」とのほほえましくも慈愛に満ちたお話をきき、最後に「ところで先生は何を教えてられますか」と尋ねられ、伝統ある國學院大學史学を学んだ私は、「日本の伝統と歴史を後世に教え継ぐことで伝統文化の継承者として責務を果たします」と生徒達の前胸を張って答えました。すると「先生。その歴史を知らなくても、立派に生きている人々がいますよね。では先生は何を教えますか」と。女子生徒の視線がどのような答えをと、私を注視していることが痛い程わかります。しかし、答えられませんでした。尾関先生は、「先生。宿題にしておきましょう」とおっしゃって、またほほえみの世界に戻り語り続けられました。この「宿題」が45年間の私自身を支えてくれたと思っています。歳月や経験・立場によって言い回し方が変わることもあるけれども、今もその答えを求めています。私が相談ごとや講話の終わりに必ず「ガンバレ」と付け加えること、これが今の私の答えでもあると思います。雨の日も、雪の日も毎朝正門で君達に、「オハヨウ」と声掛けしたように、これからも君達に「ガンバレ」と言い続けたいと思います。
  「頑 張 れ」

(『校報』平成25年3月19日号より転載)

退職に寄せて 師と仰ぐ方との出会い

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