学校長挨拶Greeting

平成25年新年挨拶新たなる久我山の発展を

 久我山会同窓の皆様方、新年明けましておめでとうございます。皆様方には、穏やかな新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。
 一昨年(平成ニ十三年)は、本校にとりましてニ十六年ぶりの甲子園選抜大会出場、学園挙げて応援体制を整えましたが、直前の東日本大震災、応援自粛の指示通りに最小限の生徒応援団を今井教頭に託しました。しかし、当日のアルプススタンドに駆けつけてくれた同窓生をはじめ久我山ファン方々の大声援。学校で応援する私は「感謝」の一言でありました。またサッカー部全国大会も国立の久我山席を埋め尽くす応援の旗波。この初戦では奇蹟が起こりました。三年部員で活動中の交通事故で意識不明の生死をさまよったS君、ご両親は本人を車椅子に乗せて応援させました。この結果、応援を境に意識が明瞭となり、今春の難関大学受験準備まで回復しました。これも皆様方が大合唱してくれた「久我山賛歌」の後押しのお蔭と感謝いたしております。
 一方では名誉校長佐々木周二先生の突然のご逝去。学園の「心の柱」を失った思いであります。「偲ぶ会」・「追弔祭」への多くの方のご参列、学校を代表をして厚くお礼を申し上げます。
 このような時流の中で平成二四年を迎え、学園は更なる文武両道の大きな発展を重ねることとなりました。進学実績においても進学校の名にふさわしく東大をはじめ難関大学に前年度を上回る実績を残してくれました。
 また、日常の部活動も朝練禁止・三時間以内の活動時間・週一日の活動停止日等の多くの活動制約の中で、部員自身の「創意工夫と努力」によって多くのクラブ活動が全国に「久我山ここにあり」の実績を示してくれました。
 その中で特記すべきは荒川河川敷コースで行われた駅伝都予選で第一区の区間賞をとりながら準優勝に終わった高校陸上競技部の高校三年の打越雄允君。高校総体・国体の東京都代表で一五〇〇M・五〇〇〇Mに出場し、また、一般社会人も含む全日本陸上選手権一五〇〇Mの予選で自己ベストを記録し、決勝では残念ながら入賞は逃したものの九位となり、二年時のフランスのリールの世界ユース選手権大会出場に引き続きスペイン・バルセロナ第八回世界ジュニア陸上競技選手権大会の日本代表として決勝レースには進出できませんでしたが「世界」に久我山の名を刻んでくれました。また打越君は、大学生憧れの箱根大学駅伝を目指すことなく「世界に通用する中距離選手」を目標にアメリカ留学を目指して語学に全力投入しています。
 打越君に影響された中学男子三年の小池真郁君は、東京短距離界で頭角を現わし、都予選・関東予選を突破して全日本中学選手権大会では二〇〇Mレース準優勝し、更に全日本中学ジュニアオリンピックでは居並ぶ強豪を抑えて一〇〇M優勝の素晴らしい快挙を成し遂げてくれました。小池君は久我山高校進学が決まっており、高校陸上界での活躍が期待されます。
 また文化部では、囲碁部の高校三年女子二宮歌穂さんは、二年時の全国高校囲碁選手権準優勝の雪辱をかけて全国高校総合文化祭の囲碁の部に臨み、念願の全国制覇を果たしてくれました。更にこの会報が届く頃には、破竹の勢いで強力フォアードの押し出す久我山ラグビーが頂点を目指して猛進していることと確信します。
 同窓会には、三期会の卒業以来の六〇回の還暦同窓会、また十一期の古稀祝いの会に招かれました。恩師を交えての在学当時の言葉遣いで語り合う姿は「楽しい」の一言であろうと思います。この久我山に集う力が今日の礎であると痛感する次第であります。
 今年は、「巳年」。巳の原字は胎児を包み抱く姿を表し、「漢書律暦志」では草木の生長が極限に達して次の生命が作られはじめる時期と解釈しています。年末の国政・都知事選挙等の激動の中、今こそ岩崎精一先生の「学園三箴」の心に立帰り、皆様方の力で再生日本のためにご尽力する時であろうとも考えます。学園も「覚える教育」から「考える教育」への質的転換を図り、教育充実に一層の努力を重ねる所存であります。同窓生皆様方の更なるご支援をお願いし、皆様方のご多幸をご祈念してご挨拶とさせていただきます。

(「会報」第51号より転載)
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