学校長挨拶Greeting
『私学の歳月』抄録新版の発刊に寄せて学園の心の支え
四月二十六日の朝、佐々木周二先生の訃報の知らせが届けられました。今年六月に白寿をお迎えになる先生の「お祝いの会」と考えていた矢先のご逝去でありました。
先生との最後のお別れは、昨年の秋に三期のO氏とご一緒にお訪ねした時の穏やかなお顔のお姿が今も思い浮かんでまいります。学園は、先生のご功績を讃えて創立記念日に「追悼祭」を斎行いたします。
久我山会も「先生を偲ぶ会」を開催することになり、その折に『私学の歳月(抄)』の再発刊のご提案をいただきました。それは、草創期・発展期に在籍して先生のお姿を知っている多くの同窓生が、今でも「『私学の歳月』を手に、正しい生き方をしているか」と自問自答していますとの声を聴きます。また先日も、他校の先生より『私学の歳月』をことある毎に読み、指針にしていますとのお言葉をいただいております。
学園を築かれた先生の熱い胸の内からほとばしる思いが、この冊子には凝縮されています。
私自身、今日あるのは「言葉に言い尽くせない先生」のお陰であります。先生の「男のケジメのつけ方だぞ」・「時に耐え忍べ」・「苦しくとも原典に立ち戻って学べ」・「若い時に小手先の技でなく直球をなげろ」など、こと折々の先生の言葉が心の支えになりました。
奉職当時は、「なぜあんなに厳しいのだろう」と反発したこともありました。がしかし、「表面的に優しい教員はいつでもできる。十年・二十年先の生徒にとって何が大切かを考えろ」の先生の「大きな真の生徒愛」を肌で感じた時に、はじめて久我山教員の第一歩を踏み出したのだと今思っております。
今、問題生徒の処分などの時、「そのくらい、しかたないよ」の生徒に迎合する風潮の中で、「先生ならば」と思い『私学の歳月』を読み返しております。そこには久我山のその時代・時代の姿を描くと共に久我山の精神が刻まれ、学園の道筋を示していると思っております。
その『私学の歳月』から久我山会が選び抜いた抄録新版の三十三編の文章は、多くの同窓生の記憶の中に今も流れている「佐々木周二先生への思いと心の糧」であろうと思います。
今、年の若い同窓生の皆さんは、ここに記載されたことを全く知らない世代の人もいると思います。この小冊子を手にして「在りし日の久我山」に思いを馳せていただきたいと思います。「学園三箴」・「明るく、さわやかに弛まざる努力を重ね、明日の日本を担う青年の育成」。そして、生徒自身のキャッチコピーである「きちんと青春」は、先生の「久我山生への深い教育愛」と同窓生に流れる「久我山の精神」に裏づけされた結果であることに思い至ってください。
最後に、同窓生と共に培った「変わることのない久我山の心」と「佐々木周二先生の思い」を学園の支えとして、更なる発展を誓います。
また、同窓生皆様が、今一度、久我山の原点に戻り、より一層に社会に貢献されますことをお祈りいたします。